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データサイエンス研究者インタビュー

データを活用したウェルビーイングを高める都市づくりを目指して

花里 真道 博士(工学)
千葉大学予防医学センター
准教授・副センター長
分野:建築計画・都市計画学、公衆衛生学
関連業界:不動産・建設・小売
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データサイエンスとの出会い

本日はよろしくお願いいたします!早速ですが、花里先生がデータサイエンスに関わられるようになられたきっかけや研究領域について教えてください。

花里先生:こちらこそよろしくお願いいたします。もともと私は大学時代に建築デザインを学んでいたこともあり、社会人としては建築デザイナーからキャリアをスタートしました。ただ就職して3年くらい経った時にリーマンショックが起こってしまい、その時の発注元が倒産し、設計していたオフィスビルの建設が止まってしまいました。

それはいきなり本当に大変でしたね(汗) その後どんな形でキャリアを進めていかれたのですか?

花里先生:逆に仕事がなくなったことで一気に時間ができたので、これからの建築や都市のあり方について思索を深める時間ができました。建築デザインは一般的には見た目の美しさを追求することのように考えられがちですが、建築や都市のあり方が社会課題に関係しているという原点をより深く理解することができるようになったと思います。当時、大学にも来る機会があり「人の役に立つ建築や空間はどのようなものか?」という観点で公衆衛生学に出会い、その領域の知識を深めていきました。建築や空間が人にどのような影響を与えているのかを、環境要因や人の状態のデータで理解していくものですので、取り組みの中でデータサイエンスともかかわるようになりました。

公衆衛生学との出会いがデータサイエンスにつながったのですね。先生のもともとのご専門である建築デザインと公衆衛生学には関係性があるのでしょうか?

花里先生:はい、実はもともと建築や都市デザインの学問としての成り立ちに、公衆衛生学が深い関係を持っていました。産業革命期に都市に過剰に人が集まるようになった際に、都市の衛生状態が著しく悪化しました。この社会課題を解決するために、よりよい衛生環境を実現するための都市計画学や建築学が学問として発展しました。後に、高度経済成長期の公害問題などでも両者の距離は近づきました。グローバル資本主義が進む現代の文脈では、そこに暮らす一人ひとりの生活の質やウェルビーイングを高める空間づくりという点で、公衆衛生学の考え方が注目を集めています。

研究領域や研究実績の社会への還元

公衆衛生学と建築デザインがこのように密接に関わっているとは知りませんでした!健康都市空間デザインの領域で様々な課題や研究に取り組んでいる花里先生の研究室の強みについても是非教えて下さい。

花里先生:私たちの強みは、データサイエンスを含む科学的なアプローチで現象を理解することができることと、その一方で抽象的な理論から具体的なデザインやコンセプトに落とし込んだ提案までできることだと思います。例えば、企業様との共同研究でよくいただくご依頼としては、作り上げた建物や街がそこを訪れる人々のウェルビーイングにどのように影響を与えているのか?といったものがあります。そのようなケースでは、関連データを取得、分析しどのくらい健康に寄与したか?といった内容を評価します。さらに、こうした科学的な知見に基づいた具体的なビジョンやコンセプトを深めたいというご依頼もいただきます。研究室のメンバーにはデザインの専門家もおりますので、社会課題を総合的に捉えビジョンやコンセプトを立案し、具体的な空間提案までさせていただくこともあります。

具体的なビジョンやコンセプトのご提案は貴所ならではのお強みですね!これまでは実際にどのような共同研究をされてきたのでしょうか?

花里先生:様々な企業様と共同研究を進めさせていただいているのですが、一例をご紹介させていただきます。竹中工務店様とは、健康を築くための『健築』を実現するためのコンセプトを形作る議論をさせていただきました。またイオンモール様とは、商業施設がどのように利用者様のウェルビーイングに寄与しているのか?という調査や、それをもとに今後のビジョンやコンセプトを検討する共同研究を実施しています。さらに、野村不動産様が千葉大学西千葉キャンパス隣地で実施されている都市開発にて、健康まちづくりをテーマとした共同研究も実施しています。このように、学術的な共同研究の推進に加え、研究成果の社会実装にも注力しています。

本当にさまざまな企業様と共同研究を実施されていらっしゃいますね。そのほかにも強みはありますでしょうか?

花里先生:私たちが属している組織は予防医学センターという医学系の研究所です。臨床もされる医師である研究者の方々との距離がとても近く、適切な支援を受けられる環境です。健康やウェルビーイングについて的確なコメントが可能であることや、最先端医学の動向も踏まえられる、など協働における大きな強みだと感じています。

今後の展開について

ありがとうございます。最後に、今後の技術の発展によって先生の関わる研究課題や研究スタイルがどのように変わっていくのか?という展望を教えてください。

花里先生:私たちは主に、人の状態に関するデータとその環境に関するデータの2種類を扱っています。最近では、ウェアラブルデバイスや環境センサー等、計測機器の進化にともなって、より多くの種類のデータがより細かく大量にとれるようになってきています。こうしたデータを高度に分析するスキルや環境を維持しつづけたいと思います。そうすることにより、今まで見えていなかった細かな変化、あるいはダイナミックな変化に気づくことができるようになると思います。一方で、人にとって「より良い」とはどういったことなのか?という健康やウェルビーイングに関する本質的な価値について、人文科学的なアプローチからも思考を深めていきたいと思います。また、進行する地球温暖化対策、気候変動対策は、あらゆる社会課題と連関する最重要テーマです。保健・医療分野ではプラネタリーヘルスというキーワードで、地球と人の健康の両立を目指す視点が提示されています。私たちも環境と健康の両立を追求していきたいと思います。

変化し続ける技術や環境の中で、先生の先を見据えた研究指針がよく理解できました。最後にご覧になっている皆様へメッセージをお願いいたします。

花里先生:私たちの研究室ではこれからの都市や空間のあり方やデザインについて、学術研究の推進はもとより、共同研究による研究成果の社会実装を通して、より実践的な知識を蓄積していきたいと考えています。共同研究では、社会課題の解決と社会の発展を追求するビジネスの皆様と、普遍的な現象を追求する研究者が、共に刺激を受け合い、学び合いながら成長することができる大変すばらしい機会だと感じています。ぜひ、協働し、思考と実践を深めていくことで、社会の持続的な発展を、共に目指しませんか?

本日は貴重なお話を頂きまして誠にありがとうございました。

略歴:
2002年千葉大学工学部デザイン工学科卒業後、同大学大学院工学研究科修士課程修了。株式会社栗生総合計画事務所、個人事業(デザイン業)を経て、千葉大学予防医学センター技術補佐員。その後、特任助教、特任准教授、工学部建築学科非常勤講師を経て2013年12月より千葉大学予防医学センター・健康都市空間デザイン学分野・准教授。
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